一本化したけど借金が増えた

あなたは借金の一本化をしたら生活が楽になると思っていませんか?

  • 毎月の支払いが厳しい、返済額が減ってくれれば…
  • 今より金利が下がれば完済しやすくなる!
  • 借り入れをまとめればお金の管理がしやすい

または、ネットの口コミや貸金業者の広告をみて「借金解決の救世主」のように思っていませんか?

実際に、借金を一本化して金利が下がれば、支払総額が減るので完済しやすくなります。

しかし、これまで借金を繰り返してきた人にとって、一本化するメリットはゼロに等しいです。

あなたが今現在、多重債務で返済が難しい状態ならば、債務整理も視野に入れてみてください。

なぜなら、一本化は「新たな借金を増やしやすい環境」に、債務整理は「借金そのものをできない環境」にするからです。

ここでは、「一本化のデメリット、種類、仕組み」と「債務整理が借金解決に効果的な理由」を解説します。

最後まで読んでいただければ、5年後、10年後に借金のない生活を送るために、今やるべきことが見えてきます。

1. 多重債務者にとって一本化のメリットは、むしろデメリットでしかない理由

借金の一本化は、一見すると返済が楽になるような気がしますが、実は根本的な解決にはならないのです。

まずは、Aさんの事例をご覧ください。

Aさん(会社員 男性)

  • 年収300万円
  • 借入総額150万円/3社
  • 月の返済額5.5万円
  • 完済まで49ヶ月(4年1ヵ月)
  金利 将来利息 返済期間
現状のまま 15.05% 391,876円 49ヶ月
(4年1ヶ月)
一本化
ケース1
9.8% 283,465円 43ヶ月
(3年7ヶ月)
一本化
ケース2
7.8% 214,343円 42ヶ月
(3年6ヶ月)

Aさんの場合、上手くいけば一本化によって金利が7.8~9.8%くらいに下がると考えられます。

そのため、現状のまま返済を続けるよりもメリットがあるように思えます。

任意整理 0% 0円 36ヶ月
(3年)

しかし、任意整理なら将来利息がカットされるので、今後支払う利息は39万円が0円になります。

返済期間も短縮され、借金の負担が早く大幅に減ることがわかります。

わかりやすく解説するためにここでは省きましたが、さらに任意整理には借金元本の減額や過払い金返還も期待できます。

このように、一本化は借金の負担は減りますが、債務整理と比べると借金解決の手段ではないことがわかります。

では、一般的に言われている一本化のメリットが、多重債務者にとってデメリットになってしまう点について解説します。

1-1.「金利が下がる」は効果が薄い

アイフル
おまとめMAX12.0~15.0%単一金利

  金利 金利適用方式
プロミス
おまとめローン
6.3~17.8% 単一金利
アコム
借換え専用ローン
7.7~18.0% 単一金利

上の表で、あなたは各社の最低金利に目が行ってしまうでしょう。

しかし、最低金利を適用される人はまずいません。

実際のところ良くても、銀行系なら8~10%くらい、消費者金融系なら12~15%くらいまでしか下がりません。

Aさんのケースでは、金利が15.05%から7.8%に下がり利息が17万円ほど減りましたが、任意整理なら約39万円分の利息をカットできます。

1-1-1. 変動金利はリスクが高い

ローンには大きく分けて固定金利(単一金利)と変動金利の2種類があります。

固定金利は返済開始から完済まで金利が変わることがありませんが、変動金利は短期プライムレートをもとに年2回金利が見直されます。

金利 将来利息 差異
7.8% 214,343円 0円
8.8% 247,977円 +33,634円
9.8% 283,465円 +69,122円
10.8% 320,946円 +106,603円

Aさんのケースでは金利が2%上がると、利息が最大約7万円増えます。

紀陽銀行
おまとめローン
3.8%、5.8%、7.8%、9.8%、13.8% 変動金利

「価格.com」の人気おまとめローンTOP3で紹介されている紀陽銀行は、変動金利のため返済途中で金利が上がっても文句が言えません。

北陸ろうきん
おまとめ名人
6.5%
別途保険料年1.2%
変動金利
東北ろうきん
おまとめローン
6.425%
または8.375%
単一金利

北陸ろうきんも変動金利で、さらに保険料が上乗せされるので現在のところ実質7.7%です。

東北ろうきんは、単一金利ですが公務員などの団体会員専用ローンなので一般人は借入できません。

1-2.「月々の返済額が減る」は返済期間を長引かせ利息を増やす

一本化で金利が下がれば、毎月の返済額も安く抑えられると考えている人も多いと思います。

しかし、これにも大きな落とし穴があります。

月の返済額 返済期間 利息
5.5万円 31か月 156,464円
5.0万円 34か月 174,000円
4.5万円 38か月 196,094円
4.0万円 44か月 224,850円
3.5万円 51か月 263,896円
3.0万円 61か月 319,920円
2.5万円 77か月 407,278円
2.0万円 104か月 563,396円

当然のことながら、返済額が少なければ完済までの期間は長引きます。

そうなると利息が膨れ上がり、一本化する前より総返済額が増えるのです。

1-3.「毎月の返済が1度ですむ」は借金の怖さを忘れさせる

「一本化で借入先が1社になるので管理しやすい」などと言う人もいますが、一本化を考える人は管理できなかったから今の状況になってしまっています。

返済計画が立てやすくなるのは事実ですが、返済先が一つだろうと複数だろうと、返せる人は返せるし、返せない人は返せません。

それよりも、月の返済が1度ですむようななったことで、借金が減った錯覚に落ちることの方が怖いのです。

さらに、完済した借入先のキャッシング枠で再度借り入れてしまい、以前より借金を増やすケースもあとを絶ちません。

二度と借り入れできないようにローンカードの返却や解約をできるでしょうか?

まずは生活を見直さないと、同じ事の繰り返しどころか現在よりも確実に状況は悪化してしまいます。

一本化は、借金を増やしたい人にとってはメリットがあるのです。

2. 「一本化」の種類、仕組みを解説

フリーローン 目的ローン
カードローン
キャッシング
おまとめローン
借り換えローン
教育ローン
自動車ローン
住宅ローン
リフォームローン
ブライダルローン
医療ローン
引っ越しローン
旅行ローン
目的フリーローン
使い道は自由
限度額内で何度でも借入できる
高金利
使い道は限定される
追加の借入は不可
低金利

ローンには「フリーローン」と「目的ローン」があり、フリーローンで一本化することもできますが、「借金返済にしか使えない、追加で借入できない」という条件付きの目的ローンの方が金利が低く設定されています。

貸金業者によって商品名が異なりますが、借金一本化の目的ローンは「おまとめローン」や「借り換えローン」などと呼ばれています。

ここで注意したいのが、「おまとめもOK、借り換えで節約」などのフレーズが入ったフリーローン商品が存在することです。

広い意味では一本化になりますが、金利はほとんど変わらず、追加融資も可能のため借金を倍増させるキッカケになります。

2-1. おまとめローン、借り換えローンは総量規制対象外

年収300万円のAさんは、年収の1/3にあたる100万円までしか借りることができないと貸金業法の総量規制で決められています。

しかし、総量規制には例外が認められていて「借りる側が一方的に有利となる借り換え」なら年収の1/3を超える貸付が可能となっています。

そのため、目的ローン商品の「おまとめ、借り換え」は、総量規制の対象外です。※詳しくは貸金業法 総量規制とは?をご覧ください。

2-1-1. 銀行も2017年11月以降、総量規制をはじめた

貸金業法は消費者金融などの貸金業者に対する法律のため、銀行はあてはまりません。

そのため、銀行は年収1/3を超える貸し付けをしていました。

その結果、総量規制が完全施行された2010年6月から破産者は減少を続けていますが、銀行からの借り入れによる破産者の比率が増加しました。

この問題に対し、日本弁護士連合会が「銀行がいっぱい貸しちゃうから、返せない人がたくさんいる。それやめて!」という内容の意見書を提出しました。銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書

現在のところ法的な効力はありませんが、2017年11月以降この件がきっかけで銀行は年収1/3を超える貸付を自主規制しています。

どんな人が破産しているのか詳しく知りたい人は「債務整理の件数や借入状況」をご覧ください。

2-1-2. 銀行の一本化で借金が倍増したAさん

そもそも年収300万円のAさんは総量規制で100万円までしか借りれないはずなのに、なぜ借金が150万円もあるのでしょうか?

これには総量規制外の銀行の一本化が大きく関係していました。

はじめ、Aさんは消費者金融2社から各50万円(計100万円)を借り入れしていました。

年収の1/3に達するため、新たな借り入れはできない状況です。

そこで目を付けたのが、銀行のフリーローンでの一本化でした。

もちろん当時の銀行でも上限なく貸してくれるわけではありませんでしたが、他社の借金は含めず年収の1/3程度の融資を行ってくれました。

ここで、銀行からの融資を消費者金融の返済に充て、普通に返済を続ければ問題はありませんでした。

しかし、Aさんは完済した消費者金融から再度借り入れしてしまい、借金の総額は200万円まで膨らんだのです。

Aさんの行為は決して珍しいケースではなく、一本化を2度行い年収以上の借金を抱えてしまう人もいます。

2-2. 審査に通るのはそもそも返済できる人(今返済できないなら無理)

おまとめローンや借り換えローンの審査は、「借入4社で要注意、5社でアウト、3社以内でないと通らない」と言われています。

通常のローン審査のように、信用情報、在籍確認、スコアリングなどを見られますが、より大きい金額を貸し付けるため基準が厳しいのです。

  銀行 消費者金融
審査 通りにくい 通りやすい
金利 低め 高め

すでに多重債務で返済が厳しい状況の場合、一本化したいと思って申し込んでも審査に通るのは正直難しいです。

また、審査が甘いとされるプロミス、アコムなどの消費者金融で借り入れできても、金利が15%では現状とほとんど変わりません。

審査の申込みも信用情報に6ヶ月間履歴が残るので、多重申し込みもできません。詳しくは「ローンが組めない理由」で解説しています。

つまり、借金の一本化は返済にまだ余裕がある人しか審査に通らないのです。

2-3. 加重平均金利の計算方法

一本化したいなら、現在借り入れしている金利より低くならなくては意味がありません。

ただ、複数から借り入れしていると貸金業者によって金利が異なるので、まずは「加重平均金利」で基準とする金利を計算します。

加重平均金利の計算式
(各借入先の年間利息の合計) ÷ (借入総額)

難しい計算ではありません、Aさんの例で解説します。

借入先 借入残高 金利 年間利息
借入残高×金利
三菱東京UFJ銀行
「バンクイック」
100万円 13.6% 136,000円
モビット
カードローン
35万円 18% 63,000円
プロミス
フリーキャッシング
15万円 18% 26,700円
3社合計 150万円 15.05%
加重平均金利
225,700円
(100万円×13.6%)+(35万円×18%)+(15万円×18%)=225,700円
225,700円÷150万円=15.05%

つまり、Aさんは15.05%より一本化で金利を下げる必要があります。

借金返済の基本は、「金利が高いものから返す」です。

金利が高い借り入れを優先して返済した場合、一本化するよりも利息がかからずに早く完済できるケースもあるので念入りにシミュレーションしましょう。

借入額 上限金利
10万円以内 20%
100万円以内 18%
100万円以上 15%

このときに上表の上限金利を超える金利はグレーゾーン金利なので、すぐに弁護士に過払い金返還請求の相談を行ってください。

3. 一本化詐欺に注意

審査に通らず一本化できない人を狙った詐欺事件も起こっています。詳しい被害例は「呉市ホームページ 消費者トラブル情報」をご覧ください。

貸金業者自身が「審査が甘い」と言うのは違法なので、100%詐欺業者か闇金です。

知らない名前の貸金業者や他と比べ極端に金利が低いときは、必ず登録番号を確認してください。

登録番号

  • アコム:関東財務局長(12)第00022号 日本貸金業協会会員 第000002号
  • モビット:関東財務局長(6)第01239号

貸金業登録は3年に一度更新があり、更新されると()内の数字が増えます。

アコムは36年以上、モビットは18年以上貸金サービスを続けているので信用できる、ということです。

更新回数が少ない業者は慎重になってください。

また、闇金の場合、貸金業登録自体をしていません。そのため、嘘の登録番号を記載している可能性も高いです。

詳しくは「闇金の手口と対処法」をご覧ください。

4. 借金生活から抜け出す3つのポイント

月の返済額を減らしたい
借金を早く完済したい

ここまで読んでいただければお分かりだと思いますが、目先の返済日ばかり考えていても根本的な解決にはつながりません。

  1. いつ完済するか?ゴール地点を決める
  2. 金利の高い借り入れを優先して返す
  3. 家族に打ち明ける

まず、ゴールがわからず走り続けても、途中で心が折れてしまいます。

エクセルでも紙に手書きでもいいので、あなたがどんな状況なのか?そして、このままだといつ完済できるのか返済シミュレーションも使って正確に再確認しましょう。

また、返済額の見直しも重要です。

金利の高い借り入れから返す基本形で見直すと、より良いルートが見つかるかもしれません。

最後に、家族がいれば必ず相談してください。

内緒の借金は言いたくない気持ちはわかりますが、ここまで来たら自分一人での解決は難しくなっています。

バレてから話しても、その頃には事態が悪化して手の付けようがなくなります。

怒られるかもしれませんが、味方にもなってくれるはずです。心の支えがあれば力が湧いてきます。

自分への戒めも込めて、勇気を出して話しましょう。※「借金返済5つのコツ」もご覧ください。

5. 意思の弱い人はブラックリストに乗ることがメリットになる

一本化は金利条件や審査の問題がありますが、債務整理は誰でも手続きすることができます。

ブラックリストに乗りたくないと言う人もいますが、すでに返済が難しい状態の人にとっては「借金をできない状況を作る」という点では大きなメリットになります。

例えばブラックリストの登録期間は、任意整理で5年です。

Aさんが一本化をして金利7.8%に下がっても、月の返済額を3万円に減らしてしまうと返済期間は5年と1ヵ月かかります。

しかも、このシミュレーションはかなりの好条件で一本化に成功し、なおかつAさんが他から借り入れしないで真面目に返済した場合に限ります。

そんなに意思の強い人は一本化するような状況になるでしょうか?

5年後、10年後に相変わらず借金生活を送っているか、あの時の決断が正しかったと思えるか、将来をしっかりとイメージしてください。

5-1. 過払い金がありそうなら、すぐに弁護士に相談

2007年~2008年ころ以前に20%を超える金利で借り入れしていた人は、過払い金が発生している可能性が高いので迷わず弁護士に相談してください。

「もしかしたら、よくわからないけど…」と半信半疑の人でも、相談は無料なので損はありません。

取り戻した過払い金で借金を完済し、さらに現金を手にするケースも少なくありません。

過払い金請求は、平成22年まで「コード71 契約見直し(契約変更)」という形で一時的にブラックリスト載りましたが、現在は一切登録されません。

また、取り戻した過払い金で返済しても借金が残ってしまう場合は任意整理の扱いになり、5年間ブラックリストに載ります。

しかし、借金そのものが減り、返済総額や期間も大幅に短縮されることを考えればメリットは大きいです。

借入期間が長ければ長いほど利息が増えるという解説をしましたが、過払い金も長い間借金をしていると知らぬ間に大きな金額になっています。

一本化したあとに過払い金請求することもできますが、まずは引き直し計算をして正確な過払い金の額を把握することが大切です。※「過払い金の消滅時効」についてもご覧ください。

5-2. 主婦や学生も債務整理できる

最近では、主婦や学生にクレジットカードのキャッシングやリボ払いで返済できなくなるケースが増えています。

正社員でなくてもアルバイト、パートで安定収入があるなら、任意整理できますが、無職の場合は自己破産になります。

債務整理はあくまで債務者本人の問題なので親や夫、子供に影響することはありません。

しかし、まずは家族に相談して、できる限り話し合いましょう。解決策が出てくるかもしれません。

それでも難しければ、債務整理があなたを救ってくれます。

5-3. 住宅ローンがある場合

住宅ローンは借入金額が大きいため、金利1%の差も大きくなります。

さらに、家族が住む家を失うわけにはいかないので、住宅ローンの借り換えは慎重に粘り強く考えてみていいと思います。

ただし住宅ローン以外の借金で困っている場合は、借入先を選んで借金整理することができる任意整理も検討しましょう。

また、持ち家を守りたい人のために作られた個人再生も効果的です。

6. まとめ

  • 一本化で金利が下がっても効果は薄い
  • 一本化しても借金そのものは減らない
  • 一本化によって新たに借金するリスクが増える
  • 一本化は借金解決の手段ではない